うまいこといえない。

うまいこといえない人がつたないなりに誰かになにかを伝えるための場所。

出走確定。長い道のりを経て、メイショウアラワシ

中山グランドジャンプの出走馬が確定した。
海外遠征勢が出走を辞退し、前年度の最優秀障害馬は骨瘤による回避。
さらには大障害2着馬の屈腱炎による引退…
あれよあれよという間に登録馬は減ってゆき、今年度春のグランプリはわずか10頭であらそわれることとなった。
障害競走、特に中山の大障害コースという特性上、「出られるものなら出よう!」という類のレースではないので少頭数になるのはさして珍しいことでもない。
この頭数、このメンバーだからこそ落ち着いて競馬ができる(サナシオン一強に加えて軒並みオープンで勝ち負けした馬が中心なので、比較的予想はしやすい)、という利点と妙味もありそう。
なにより、ここでこそ活路を見出せる馬がいるのではないだろうか…
そんな馬を探すのもまた一興。

 

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彼の名はメイショウアラワシ。
障害馬としてはまだまだ若い5歳馬だが、3歳夏に入障して以来ハードルを跳び続けているベテランである。
トレーナーの安達師いわく「障害向きの気性」で「飛越の上手な馬」。
無難ではあるが「安心して見ていられる」とのこと。
「平地力は低い」がすこぶる丈夫で、どの競馬場のどんなコースも堅実にこなし(中でも福島が一番合っているそうな。覚えておきたい)、どういうわけか人気はしないが人気以上の着順で無事に帰ってくる。
2月21日の京都にてオープン競走を勝ったのち、前日スクーリングを経てペガサスジャンプステークスに出走。
4着とまずまずの結果で初の中山コースへの適性を示した。
陣営の視線の先には早くから大障害コースが見据えられていたのだろう。
この大舞台への参戦は悲願だった。
いずれは、もしかして、と漠然と夢に見ていたことが、長い道のりを経て堅実に花開こうとしている。
この馬を、陣営を、私はゆえあって応援している。
がむしゃらに追うとはなしに、めちゃくちゃに推すでもなく淡々と、しかし格別の想いと思い入れを抱きながら、競馬という障害競走という一連の流れの中で見つめ続けている。

歓喜の戴冠から一年。
この春にアップトゥデイトはいない。
一番いてほしかったけれど。
この馬はアップトゥデイトとは違う。
戦績も道程も何もかも。
しかし比較するまでもなく、彼は彼で、この馬はこの馬で、それぞれに見つめる理由と熱意、感情がある。
そんな存在が少ないながら何頭かいる。
何頭いてもいいのだ、競馬には。

好きなレースを好きな馬が走る。
彼らを間近に応援できる。
競馬ファンとしてこれ以上に嬉しいことはない。