うまいこといえない。

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二度目の小倉。アップトゥデイトが見せた“顔”

おととしの覇者がこの地へと戻ってきた。
春の大一番、中山グランドジャンプで健闘も悲願ならなかったアップトゥデイトと陣営が次走に選んだのはやはり小倉サマージャンプだった。
J・G1初制覇した勢いそのままに快勝したこのレースで完勝の糸口をつかみたい考えもあったのだろう。

あとひといき。
あとは勝負に勝つだけ。
ライバルたちの猛追をふり切ることが難しくなったかつての障害王者に、いつしか多くのひとは衰えを意識するようになっていったが、そうした声があがるたびに
「違う、違う、それは絶対に違う!」
と私は心の中で反論をしつづけていた。
1着が獲れなくなった途端に好きな馬が侮られるのは悔しかった。
そうでないことが証明される瞬間を待ち、信じ、願い続けてきた。
それがこの日、強い確信になった。

パドックに姿を現したアップトゥデイトは物見をしていた。
首を振り、ぐいぐいと引っ張るように周回し、大人の落ち着きを見せていたここ数戦とはまるで違う、いい意味でのチャカつきが戻っていたように感じた。
彼の表情は“かわいく”見える時と“けわしく”見える時があり、この日は後者だった。
激しいほうのスイッチが入った、瞳に力のこもった、ちょっと怖い顔。
“かわいい”顔をして周回していた新潟ジャンプステークスを大敗したのち急きょ参戦した阪神ジャンプステークス、これまで見たこともないような闘争心と必死の形相で勝ち馬に食らいついていったあの時とまったく同じ顔をしていた。

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レースは逃げるメイショウヒデタダを終始ぴったりとマークする形。
いよいよ単独で抜け出すかというときにはもう、勝ち馬が持ち前の平地力をもって進出を開始していた。
マッチレースとなった最後の直線。
叩き合いを制したのは、まるではかったかのような末脚を繰り出したソロル
わずかにハナ差かわされたところがゴールだった。
もちろん決め手もだが、斤量の差も響いたのだろう。完敗だった。
3着にはおととしと同じくマイネルフィエスタが入線し、くしくも7歳馬同士の同期決着となった。

惜敗こそしたものの、これは衰えての敗戦では決してない。
未だありあまる力を見せつけた、秋冬の復権を予見させる結果といっても過言ではないだろう。
パドックを見て「若返った!」と感じたが、そもそも若返ったというほど衰えても老け込んでもいない。
復活でもない。沈んでなど一度もいないのだから。
そしてこれは勝てなかったアップトゥデイトを甘やかすために、都合のいいことを自らに言い聞かせるために書いているわけでもない。
そうすることは彼の周りにいる素晴らしいライバルたちをも侮ることとなる。
サナシオン、タイセイドリーム、ニホンピロバロンオジュウチョウサン、そしてソロル
彼らもまた自らが障害王者となるために着々と力をつけてきたのだから。
最高の障害馬たちが切磋琢磨しあいながら最高の舞台でしのぎを削る。最高じゃないか。

アップトゥデイトとはかれこれ新馬のころからの付き合いだ。
いいときもそうでないときも、勝ちきれないときも、思いどおりにいかなくても、それでも“最強”を背負って戦いつづける。
私はその姿勢に惹かれつづけている。“戦う男”アップトゥデイトに惚れている。
陣営はこれまでの敗戦を教訓に“早く仕上がってしまう、本番を前にしてピークを迎えてしまう”ことを踏まえて、今回の入厩をひと月前から約二週間前へと遅らせて短期間での調教に尽力したようだ。
そんな陣営のことも私は信頼している。
彼らと私の旅路にはまだまだ果てが見えない。
そのことが、今は何より嬉しい。