うまいこといえない。

うまいこといえない人がつたないなりに誰かになにかを伝えるための場所。

もう会えない馬との再会

メイショウダッサイが2020年中山大障害の覇者となった。
結果を知ったとたん、涙がこみあげてきて困った。職場で休憩中だったのに。
「わたしあの馬のことでまだ泣くんかい!」である。
新たな障害王者誕生への喜びと自分への苦笑と、懐かしい友だちに再会できた嬉しさとで、泣きたくて泣こうとしたんじゃなくって、ほんとうにあふれてこみあげてきて困った。
仕事場で涙をこらえる謎の光景。同じことなら現地で号泣したかった。

メイショウアラワシのことを思い出した。ひさびさに。
彼をうしなったときは、忘れられる日は来ないと思いつめ、思い出すたびに泣いていたけれど、月日は流れてさすがに思い出になってくれていた。
優しい彼はわたしの苦しい執着を持っていって成仏してくれたのだ。

厩舎も違う。お父さんお母さんも違う。全然違う。
ただオーナーが同じで、同じ冠名をいだいている。それだけといえばそれだけ。
それでも。
かつて彼の主戦をつとめた森一馬騎手とともに、メイショウの名を冠した障害馬がジャンプレースのグランプリホースとなった。
わたしにとっては充分すぎるつながりだった。
J・G1は、彼にとっては二度挑んで届かなかった、三度目の挑戦はかなわなかった夢の舞台だったから。 
まだ夢でも会えていなかった彼との思いがけない再会を、まさかこんなかたちで、違う馬が叶えてくれたなんて。
…でも、まあ、わたしが勝手にそう受けとっただけなんですけどね。心の中で。

個人にとっての競馬って、たぶん思い入れとこじつけの積み重ねで思い出ができていく。それでいいんだと思う。
メイショウダッサイと森一馬騎手はなるべくして人馬一体となって勝利を掴んだ。
純粋に祝福と賞賛をおくるとともに、わたしの昔なじみと会わせてくれたお礼もこっそり伝えました。心の中で。
やっぱり心の中だけじゃ足りないのでここに書きました。ありがとうとおめでとう、いくつ言っても足りない。

アラワシとの思い出は、これでまた一区切りつきました。これからも思い出しては何区切りもつけていくのでしょう。
わたしの永遠の友だち、次こそは夢で会いましょう。
ダッサイにも会ってお礼と応援をしたいから、来年こそは中山へ行かなければ。