うまいこといえない。

うまいこといえない人がつたないなりに誰かになにかを伝えるための場所。

宮記念とキアラさんとわたし

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3月28日。
わたしはサウンドキアラに会いたかった。
昨年末の阪神カップで復調の糸口をつかんだ彼女の次走は、まさかのぶっつけ本番G1。高松宮記念だった。
意外すぎて、おもしろい挑戦で、夜も眠れぬほど楽しみにしていた一戦だ。
もちろん会うというのは一方的な想いだし、わたしが行こうが行くまいが馬も人もがんばるので、まあこれは完全に自己満足なのだが。
というわけで中京競馬場の指定席が、喉から手が出るくらい欲しかった。
一般予約で落選し、先着順のキャンセル募集が解禁になってからは隙あらばJRAのホームページ上にいた。
大人げなくも残席予約ページの更新を繰り返しながら、「金ならある!言い値で買う!なんぼや!」というガツガツした気持ちでおり、最終的に前日23時でタイムアップとなって遠征の夢は露と消えた。
「こんなに好きなのに何で行けないんだ~!」と部屋でゴロゴロ悶えながらも、「いや熱意や愛情の話じゃないよね今コロナだもん」と冷静でちゃんとわかってる自分がおり。
だからわりと大丈夫だった。一瞬ちょっと「はぁ~…」って泣きそうだったけれど。

きょうという日のこのレースは、自宅で迎えた。
馬券はウインズで買ってきた。
できることをできるところでできるだけ。それが一番の応援だ。
サウンドキアラと松山弘平騎手、そして陣営は最善を尽くした。
万全のコンディションに調整され馬は元気いっぱい。
大外枠からの好スタート。好位につけて、いつも通りの良い立ちまわり。
最後の直線でレシステンシアと一緒にあがっていけるかと思ったが、さすがに雨で渋った馬場。
外をまわったぶんやはり最後が苦しくなった。
それでも、もしやと思わせる、しっかりと1200に対応した競馬だった。
未知への挑戦にして能力の高さと成長をあらためて感じさせられた。ナイスファイトだった。
6着。最高の結果だ、というのはわたしが彼女たちを特別に好きだからこそだろうか?
いや、誰もがあっと驚いたはず。
わたしの大好きな彼女たちはすごいのだ。
誰彼かまわず大声で触れてまわりたいくらいに誇らしくて、愛おしくて嬉しい。
こんなにままならなくて遠く離れていても強く感じられる。
だから競馬はやめられない。好きが止まらない。
たとえ何かにさえぎられて思いどおりにいかなくなったとしても。

最後に。
ほんと重ねがさね言うことなんですが、気合いと根性でどうにもならないことは世の中にはたくさんあるのです。
それがコロナ禍でより明確になっただけ。
気合いと根性ですべてがどうにかなるのなら、どうにもならなかったとき自分を責めなければならなくなる。
誰か何かを恨まなければならなくなる。
せっかく好きなのに、それはあまりに悲しい。
だから、努力ではどうにもならないことをやわらかく受け入れて赦していく。
今のこの時代には、そういう生きやすく生きるための知恵を学ばせてもらっている。
…と自分に言い聞かせてきたし、書いて昇華してきたし、最近やっと実感できてきた。
ちょっとは大人になれただろうか。四十路に足突っ込んだしね。
好きは人を成長させるのです。
彼女たちと出会えた幸せをかみしめながら、ひと息ついておつかれさまの珈琲を淹れた。
最高に素敵な週末だった。