うまいこといえない。

うまいこといえないひとがつたないなりに何かを残し誰かに伝えたいブログ。

恋せぬふたりをみて、とりとめもなく考えた

要らないと捨てたものを拾って向きあう時間だった。
難しいテーマだとわかっていたので、気合いを入れて見つづけた。
他者に恋愛感情を抱かないふたりが暮らしをともにすることで、自分たちの家族のかたちを模索していく話を。
「恋しない人なんていない」
「そのうちわかるよ」
「運命の人に出会えるといいね」
「男女が暮らすっていうのはそういうこと」
「いい人見つけて結婚して子ども産んでほしい」
これ知ってる。若い頃に言われたやつだ。「あなたのために、よかれと思って」ってやつだ。
だから何も言い返せない。
きっつい言葉、ほかにもいろいろあったはずなんだけど、まあきつすぎて脳みそが記憶を消去したようです。しかもうろ覚え。
とにかく最初にめちゃくちゃ傷つけられる。常識だったり、善意の言葉で。
あとで高橋さんが腑に落ちる言葉でホッとさせてくれるのだけど、それでも感情の上げ下げでいえばだいぶマイナスである。
人は理解できないものをときに否定し、拒絶し、矯正すらしてこようとする。
相手が近しいものであればあるほどに、自分と同じか、ふつうであってほしいと願ってしまう。
そうした言動が無意識の偏見と差別になってあらわれてしまうのだ。

とはいえこれは物事の是非を語ったり、善悪を決めるためのドラマじゃない。白黒つけるもんでもない。
セクシャルマイノリティとして生きているとこういうことがあるんだ、というケーススタディのおもむき。
30分×全8回のヒューマンドラマとして落とし込むのに苦心したであろうことは察するにあまりある。
そもそも、もって生まれた性質を細かく分類し、名前をつけるのが正しいことなのかもわからない。わたしには。
もちろん名前がつくことでいくらか生きやすくなる人はいるだろう。逆だってありうる。
わたしには名前はつかない。
わたしは女性で、性愛の対象は男性だ。
恋愛も経験したし、好きな人とは触れあいたい。
もしもそう思える相手とお互いの気持ちが一致したら、恋と愛のパートナーになりたい、深く触れあいたい、家庭を築きたい、子どもを産みたいと思っていただろう。
いや~、やっぱり子どもはいいかな。
う~ん、じゃあ結婚もいいかな。
なんなら、べつにひとりでもいいかな。
こんな調子だったので、ひとりだ。
恋愛もパートナーも結婚も子どもも、わたしの人生には絶対に必要でも重要でもなかったのだ。
さりとて何となく、流れで得るような軽いものでもなかった。
これがふつうじゃないというのなら、わたしだってマイノリティだ。
創られた台詞だとわかっていても聞くのがしんどかったのは、わたしの中にも、自分はまあふつうではないんだろうなという自覚があったからだ。

主人公のふたりが一緒に暮らそうと決めたのは、帰れる場所に家族がいてほしかったから。
ひとりになりたくない、誰か味方がほしいって言えるのはすごい勇気だなぁと思う。わたしにはない価値観だ。
人とかかわるということは、世界を広げること。
世界を広げるとは、生きるための自由度をあげること。
人は変わっていくし、暮らしや生き方だってそのつど変わっていくものだから。
ひとりでも誰かとでも、生きていくのは難しい。
しかし人は他者の価値観を赦せるし、理解はできなくても寄り添える生き物であるはずだ。
わかりあえないのは、べつに誰が悪いのでもない。
誰も悪くないから自分のことも他者のことも赦そうと、みんながそう思えたらいいのに。
わたしのふつうはだれかのふつうではないし、逆だってそう。それだけのことなんだから。
恋せぬふたりの話というよりも、人間の生き方の話だなぁと感じた。
わからない人にはわからない感覚、価値観だろう、とも。
結局ふたりは家族(仮)としてつながりながら、それぞれの場所でやりたいことをして生きていくという選択をする。
その選択だって流動的だし、都度都度ふたりで考えましょうよ、という結論だった。
わたしはいいオチがついたと思えたけれど、逆に「なんだったの?」と感じる人もきっといるのだろう。
でもリアルの人生にだって、ハッピーエンドなんてそうそうないし、どうも白黒つかんからグレーのままいってみるかってこと、ままあるじゃないですか。
だからふたりが納得して決めたのならそれでいい。
自分の幸せを決めるのは自分なんだから。

さて余談。
なんで突然このドラマを見ようと思ったかと言いますと、高橋一生さんの演技に興味がわいたからです。
この方のしゃべりの間のとり方が好きだなと感じました。
あと壁をつくる、心を閉ざす人間の演技がすごかった。
元彼女の逆プロポーズを拒んだときの、ぶるぶる震える声と指だったり、会話を遮るときの、もうこっちからは一切何も言えなくなるような雰囲気だったり。
ひとりの世界をもっている方なんだなぁと感じました。
役者さんってすごい。
いやあ、すごい俳優さんだ。