うまいこといえない。

うまいこといえない人がつたないなりに誰かになにかを伝えるための場所。

なんにもできないのだから

突然起こった戦争が、手元に戻りかけていた日常の楽しいものたちや浮き足立つ気持ちを、みんな遠くへ持っていってしまったみたいだ。
どうしてこんなに落ち込んでいるのか自分でもよくわからなかった。
けど、わかった。
文化や芸術、スポーツに触れてきて、好きだなと思っていた国と国が攻めいって攻めいられて、わけのわからない戦争をしているのが悲しいのだ。
これをはじめたのは国家だ。個人じゃない。
大半の個人はふつうに暮らす善良な市民で、平穏を望んでいて、あるいは何も知らされてないかで、国と国に巻き込まれている。
でも家や暮らしや家族、平和を奪われた人にとっては目の前の兵器や兵士こそが国で、それを憎むことを、わたしには否定できない。
ひとりひとりはいい人なんだからなんて、憎しみを飲み込んですべてを赦せなんて、奪われた本人を前にしたらとても言えないだろう。
だからといって復讐や報復を肯定したいわけでもない。
争わないでほしいなんて、始まってしまった現実を前にすれば、なんと無力な願いで言葉だろう。
なんにもできないし、言えないでいる。それがつらくて悲しい。
ずっと口をつぐんで溜め込んでいた。
きのう、つらくて悲しいのだと家族にようやく話した。
うまく話せなかったけれど、受けとめてはくれた。
悲しい、つらい、なんにもできない。そう思うだけでもいいんだと。
何かできることはないかというけれど、できることも、できる人も、ほんとうに限られているんだと。
悲しくてもつらくても、思い感じることをやめずにいたい。
わたしの想いや言葉が、不用意に誰かを傷つけないようにしたい。
せめてそうして、自分の暮らしをして、生きていくしかないのだろう。