うまいこといえない。

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女三の宮とジナイーダ、似ている

源氏物語の女三の宮と、はつ恋(ツルゲーネフ著)のジナイーダ。
けっこう共通項が多いことに気がついた。遅いよ。
まあ、物語にはよくある設定のキャラクターではある。
性格ぜんぜん違うのに、なんでこんなにジナイーダをおもしれー女と感じるんだろうと思ったら、そういうことか。腑に落ちた。
源氏物語は女三の宮らへんの話が好きなんですよね。
古典読んでたらいつのまにか現代小説になってた! みたいな驚きがあって。
禁断の恋への創作意欲は万国共通で、普遍的なテーマなのか。
女三の宮もジナイーダもいいファム・ファタール

後ろ盾である片親をうしなっている(母・藤壺(源氏)女御/父・ザセーキン公爵)
やんごとない生まれ(今上帝の妹宮/農奴時代の公爵令嬢)
立派な男たちに求愛されている(宮仕えする貴公子たち/伯爵、軍人、医者、詩人)
間男の存在(若い男/おじさま)
主人公を袖にして不倫(紫の上を押しのけて光源氏正室になったが柏木に忍んでこられる/年下のウラジーミルをはべらしていたが彼の父に惹かれる)
罪の意識にはちゃんと駆られている(柏木のこと殿にバレたこわい別れたい尼になりたい/ウラジーミルの好意を知っていて彼に申し訳なく思っている)
不義の子(薫を身ごもる/文脈から、最後の鞭の別れのあとジナイーダは妊娠したと思われる)
間男が死ぬ(罪の意識から鬱になって衰弱死/脳溢血でいきなり倒れる。四十路の若さで)
若くして俗世を離れる(薫を産んだあと髪をおろして出家/お産がもとで他界)
主人公の生涯のトラウマになる(晩年の光源氏は妻の裏切りに心を病む/他界した父の年頃になってもウラジーミルは独身)


つぎに間男、柏木衛門督とピョートル・ワシーリエヴィチ。
柏木は光源氏にとっては親友の息子で、特別に目をかけていた将来有望な若者。ピョートルはウラジーミルの敬愛する父親だ。
若い男とおじさま。一見あべこべ。
どっちも強引に女を奪った男なのだけど、相手へのラブコールが見えてるぶんピョートルより柏木のほうがまだ理解できる気はする。
いや、柏木のも愛かな…… 愛なのかなぁ?
かわいそうな姫宮さまの身分と境遇に萌えたんやろ? と思えなくもない。
ピョートルも財産目当てに愛のない結婚をしたからおそらく真実の愛を探してたんだろうと思えばあわれとは言える。……言えるかなぁ?
ジナイーダを愛したからというよりは、息子が恋した隣家の美しい娘に手をつけて、自分が求める運命の女かどうか品定めしたという印象をうけた。
はじまりはガールハント。彼ほどの手練れともなればお菓子をつまみ食いするノリで女の子をモノにできるのだ。純真無垢な息子とは正反対である。
もっとも愛情は関係性によってかたちを変えるものだし、別れ際に激高して鞭で打つ、手紙をもらって泣くくらいには想いと執着があったのだろうけど。
愛かどうかはわからない。遺言書で幸とも毒とも書いているし。
ジナイーダの愛が重かったともとれる。手を出しといて身勝手な。
ふたりの間男も似たもの同士である。どっちもよその女に懸想して妻をないがしろにしているし。
妻サイドなら、女二の宮のほうがよりかわいそう。女二の宮とは、女三の宮の異母姉にあたるひと(落葉の宮とも呼ばれる)。
柏木亡きあと落葉の宮がほぼ無理やり夕霧の妻にされた経緯もめちゃくちゃ胸糞なんだ。
なぜなら柏木と夕霧は幼い頃からの親友同士だから。
スキャンダルになったら誰が叩かれると思ってんねん、女のほうやぞって言いたくなる。
一方ピョートルはジナイーダとの密会がバレて口論になったとき、年上の妻をババア呼ばわりした(たぶん)。どっちもほんとうにひどい。
いちおう夫婦仲は夜を徹した話し合いで修復はしたが、もちろんそういう問題じゃない。

そして最後に主人公。
光源氏とウラジーミルは一見まるで正反対。しかし恋多き美丈夫として書かれているピョートルの息子なのでそれなりに容姿端麗なのだろう。ただ自覚がないのと幼いだけで。
ジナイーダの死によってはつ恋をうしなったあと、彼はおそらく次の恋をしていく。
ウラジーミルのモデルともいえる著者のツルゲーネフ自身も恋多き男だったというし(庶民に産ませた娘もいる)。
ただ恋愛はしたけど結婚はしなかった。う~ん。
光源氏は結婚しまくって好き勝手に生きて死んだ。幸せだったかどうかといわれれば微妙である。晩年の弱りっぷりを見れば。
自分以上に周りを不幸にしまくった印象のほうが強い。
恋とはいったい。……恋なのかなぁ?

そもそも女三の宮もジナイーダも、はじめは間男との恋愛を自ら望んでいなかった(!)ところにものすごい引っかかりをおぼえるのだ。
男の衝動に翻弄される女。
翻弄されながらも受け入れて、愛に昇華させ生きていく強さ。
この想像の余地を残した余白こそが、彼女たちをおもしれー女たらしめているのかもしれない。
はじめての恋と情熱と絶望に触れ、大人の女性へと成長していく描写は、どちらもはっとするほどに美しく、そして壮絶だった。

 

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絵本も読みました

美しい大人の絵本でした。
抽象的な世界観で自由にはつ恋を描くとこうなるのか~。
小川洋子氏の文と解釈はかなり好き。断言せず、行間を読ませる文章。