うまいこといえない。

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生駒の山の上でメロンソーダを。「満月と近鉄」の世界を歩く

ふと思いたって、生駒山上遊園地へ行ってきました。
「満月と近鉄」を読み終えてからというもの、心と体に残る余韻でいてもたってもいられなくなったのでした。

 

生駒山上遊園地へは、近鉄電車の生駒駅を降りてケーブルカーを乗り継いで行きます。
始発から小さい子どもたちで賑わってました。夏休みだもんね。
ガタゴトとゆっくり山道を運ばれていく感じ、いい。

 

実はここに来たのは初めて。
密を避けるため、混みそうな日程では予約入場制になってます。下調べしといてよかった。
さすが山の上、眺めのよい遊園地です。
ついでに何かひとつでも乗り物乗ればよかった。空中散歩気分、味わえばよかったなあ。

 

ビューレストランのテラス席で大阪湾を眺めながらメロンソーダを。
たしかに「夢のような味」がする。

 

席につきながらだといい感じの写真は撮れなかったんですが、こういうのは追体験することにこそ意義があるので。
あのふたりにとってはすごく楽しいひとときだったんでしょう。
思い描いていた映像がひとつひとつリアルになっていく至福。

 

 

目的は果たせたので早々と撤収。

 

帰りは貸し切りでした。
ほんとうは途中の梅屋敷駅で降りて、階段状のホームに腰を下ろして夜景を眺めたかったのです。
願わくば満月を見あげたかった。歳を重ねた「私」がそうしたように。
しかしさすがに日も暮れた無人駅に女ひとりで下車する勇気は出なかった。*1
ケーブルカーは40分ごとの運行だから、降りた後だいぶ待ちぼうけになるんですよ。
そのあいだ宝山寺をお参りしたらいいじゃない、岩谷の滝まで散策すればいいじゃない、とも思ったんですが、方向音痴の人間が土地勘のない場所を時間制限つきで歩くのはいろいろとあやしい。
幸いにも行き帰りとも各駅停車だったおかげで、降りずとも梅屋敷駅がこういう場所だという雰囲気はつかめました。

いいですね……秘境の無人駅。階段状になったホーム。

 

「満月と近鉄」、行きしなの近鉄電車の中であらためて読みかえしてみました。
すると「彼女はずっと私の中にいた」への解釈もちょっとずつ変わってきて。
「私」は彼女を失ったから小説家への夢をなくしたのではなく、書きあげた4本目の小説を彼女に認められた瞬間、すべての夢が成就した。
だから情熱の根源たる彼女は姿を消した。
「私」の中にいた彼女とは、「私」のありし日の夢と情熱そのものだったからこそ、かつての情熱の結晶であった大学ノートの中の短編集を今いちど紐解いたとき、内なる彼女の存在にようやく気がついた。
情熱って冷めたり落ち着いたりもするけど、完全には消えてなくならないので。
心のどこかにはしまっておけるし、それがふとしたきっかけで鮮やかによみがえったりもするじゃないですか。そういうことなのかなって。
でもやっぱり、「私」こと前野氏も、佐伯さんも、竹林の中の山荘も、ふたりきりの時間を過ごした図書室も、あの甘美な夏の夢も、なんらかのかたちで存在していてほしいなあと思う。
ぜんぶ創作としたほうが美しいのだろうけど、なにかしら書いた人の想いだったり、思い出だったり、願いだったりが込められているのだろうから。

そんなことを考えながら帰路についたのでした。
いい物語、いい旅だった。

 

*1:遊園地がナイター営業してないとケーブルカーは夜間運行しません。
あとで知ったんですが、夏のあいだだけ限定的に9時まで営業してるみたいですね。またそのうち行きたい。