うまいことはいえないが。

書きたいように書いていたい。自分を救いたい。誰かになにかを伝えたい。

人は間違う、失敗する、でもなんとかしていく「あの子の子ども」

「読まなきゃ」と思いつづけててやっと読んだ。
こういう「課題図書」な漫画、心身ともに安定しててなおかつ腹を括らないとなかなかとりかかれない。しんどいのは目に見えてるもの。

 

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高校生カップルの妊娠をめぐる物語。
学生の妊娠のはなしは定期的にあがってくるけど、高校生同士だとより生々しくてリアル。
高校生だったらするのか…する子はするんだろうな…う〜ん、受け入れがたい。
わたしは親世代のほうに歳が近いから「子が子を作った、どうしよう、どうするんだ」と悩む側で話を読む。
わたし自身に妊娠出産の経験がないから「どうしようもなにも、なんもわからん」の一言に尽きるのだけど。

いちばんわからなかったのが、宝の母親の気持ち。
宝は、主人公の福(さち)の彼氏。ものすごくしっかりしている。みんな宝を見習ってほしい。男性、いや人間たるもの、かくあるべし。
宝の母は福に丁重に詫びたあと、子を堕ろせ、なかったことにしろと言う。
そして、堕さない選択をしたふたりを拒絶してしまう。

宝の母は、過ちをおかした宝と福を赦せなかったのだと思う。
ふたりの失敗を赦せなかった。
女の子を妊娠させた息子を、息子の子をみごもった女の子を、親として女性としてどうしても赦せなかったのだろう。
それは子の人生を狂わせることだったから。自分の子、よそさまの子、産まれてくる子、みんなの。
過去の自分は堕した。だから堕さないという選択をどうしても赦せなかった。受け入れられなかった。

実の息子をあんなにまで拒絶できるものだろうか。
宝を突き放したのは彼女なりの禊だったのか。
愛と赦しは必ずしも両立するわけじゃない。
愛しているけど赦せない。赦せないけど愛はある。そんなところか。

心身ともに幼い学生同士が恋愛感情でセックスするのを、わたしはどうしても受け入れられない。これは昔からそう。
「俺は彼女を妊娠させたりしない」と言い張った福の兄、幸に最も共感する。
幸も極端で正論ふりかざしすぎでちょっとどうかと思うけど。そのあたりは若さかな。人は正しさで人を傷つけてしまうものだ。
福と宝はちゃんと避妊をしていたのに、避妊に失敗した。でもそもそもしなければ妊娠なんてしないのだ。
幸は男性として、お兄ちゃんの立場としてそう言いたかったんだろう。彼は彼でふたりを赦せなかったのだと思う。

子を産み育てるというのは大変なことだ。
まして福と宝はそのタイミングが在学中になってしまった。未熟なふたりは家族や病院、学校を頼ることでしか妊娠出産を成し遂げることができない。
しかし働いてる大人だって、いのちを授かったらいろんな人や機関に頼りながらやっていく。
大人でも、子どもでも、誰か何かに頼るのは同じだ。そして自分も誰か何かを助ける。
人が産まれる、人を育てる、人と関わって生きていくっていうのは、そういうことのくりかえしなんじゃないのか。
生きることは難しい。だからみんなきっと「普通」でなくなる、「普通」からはみ出すことが怖いのだ。
高校生が子を産み育てることは、現段階では普通じゃない。
普通じゃないけど悪じゃない。恥ずべきことをしたおかしなやつらだと貶められたり、嘲笑されたり、排斥されるべき存在でもない。
お金を稼いでいても責任のとれない大人だっていくらでもいるしね。
人間は間違う。失敗もする。そして感情がある。
だからこそぶつかり、拒絶し、赦し、受け入れたり擦り合わせたりしながらなんとかやっていく。すべてはなるようにしかならない。なっていくのだ。

宝の母は子との絶縁を選んだけど、ふたりが自立した頃に孫を抱いてくれるんじゃないかな、とは思う。
人間って変わるしね。決して憎み合って別れたのではないのだから。そうであってほしい。