うまいこといえない。

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アップトゥデイト、真価を問われた二戦目。阪神ジャンプステークス

新潟ジャンプステークスから予定外の連戦。
アップトゥデイトは大外枠から単騎逃げて自らレースを引っ張ったが、道中じりじりと差を詰めてきたニホンピロバロンに捕まり、最後の直線における叩き合いで惜しくも競り落とされた。
わずかに半馬身及ばなかった。

なぜ新潟を使ったのか。
どうしてあんなにも、何もできずに負けてしまったのか。
競馬においてはタラレバも否定批判もしないというのが信条ではあるが、内心では疑問と不安とを覚えずにはいられなかった。
コースが不得手だったからという以前の負け方だと感じたし、パドック気配からしてすでにこれまでとは様子が違っていた。
それが体調や調整等の問題だったかどうかは知る由もないが、あの不可解な敗戦があったからこそ急遽阪神ジャンプステークスを使うこととなったのだろう。
とはいえ叩き二戦目で軌道修正をかけようという陣営の判断を信じて見守るのみ。
襷を含む阪神の障害コースは決して不得手ではない。
実績もある。
むしろ前走よりもぐっと有利になるはずだ。
相手は強いけれど…

細かいことを挙げていけばきりがない。
まずスタートで一瞬つまづきを見せる。
不安こそ感じさせはしないが、全盛期に比べるとやや精細を欠いた飛越。
大きくリードをとるも早い段階で距離を縮められる。
ところどころちぐはぐとしたレース運びで、並みの馬ならばリズムを欠き著しく消耗して、最後の直線にさしかかるかというところで馬群に飲み込まれていたに違いない。
しかし、彼はやはり、障害王だったのだ。
自ら先陣を切り、途中後続に詰め寄られながらも凌ぎ、内に秘めた闘争心を剥き出しにしてニホンピロバロンに食らいつくアップトゥデイトに新たな一面を見た。
初めて見る顔だった。
勝負根性というよりも本能、執念と言い表したい。
この馬本来の競馬をさせねば、この馬にふさわしい結果を出さねばというジョッキーの矜持もあったのだろう。
鞍上の意図を汲み叱咤に応える障害王者の気迫を見せつけられたのだった。
わずかに半馬身及ばなかったのは、相手がニホンピロバロン高田潤騎手だったからだ。
彼らでなければ押し切っていたに違いない。
斤量差も味方しただろうが、あれで七分の出来だったというのだからとんでもなく強い。
文字通り、勝った人馬に敗れたのだ。
高田騎手はこのレースをもって同一重賞7年連続連対および4連覇という大記録をうち立てた。

ライバルのレース運びは終始スムーズで完璧だった。
まさにはかったように差し切られてしまったわけだが、敗因は明確なのでこの半馬身の差をつめることは充分に可能だ。
中山大障害はさらにタフな戦いとなるのだから。
敗因という意味では、“この馬はこういうときにこうして負ける”という敗戦パターンが目に見えてはっきりと分かった新潟参戦にも収穫はあったと思っている。
何より、前走との違いは一目瞭然。
良い意味でそわそわと物見をし、パドックめいっぱい外側を元気いっぱいに周回する様子を見て「ああ、今日は大丈夫」とようやく胸をなでおろせたのだった。
マイペースな天才肌というイメージをずっと抱いていたが、アップトゥデイトは我々が思っている以上に、気持ちで走る馬なのかも知れない。


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