日曜日のヒーローインタビューがおもしろかった。
「東京五輪の緊迫した場面で学んだことは」との問いに阪神タイガースの守護神(臨時)岩崎優投手は「ここでは語りきれない、またどこかで」としながら、長い沈黙のあとにっこり笑ってうなずいた。
質問に無言で答える男。
この、あえてなにも語らないという姿勢、すごくいい。
言葉で多くを語る人間ではない彼は、侍ジャパンの一員として得てきたものについては今しがたのゲームだったりチームとの連携だったり投球の姿勢を見て感じて欲しかったんだろう。
あるいはほんとうに今はまだ語りたくなくて、ひとりでゆっくりかみしめていたかったのかもしれない。
そういわれてみれば、なにも言わない自由もあるよなぁ。それをゆるしあえるのはいいなぁ。
思ったことを思ったとおりに言う、内なる感情を見える化する、人に世に広く伝えることをよしとする今の世の中にあまりにも慣れすぎて、しばらく忘れていた感覚だった。
わかりやすくかみくだかれて「不思議ちゃん」とか言われちゃうんだろうけど。
現に笑いが起こっていたけど。
たぶん阪神ファンはみんな彼を大好きで、彼が五輪で何をつかんできたとかそういう話を訊きたくて訊きたくてたまらないんだけど。
今はひとまず置いときたいです、と沈黙をもって話してくれる彼のことも大好きなのだ。きっと。
あまりに微笑ましくて、つられて一緒にニヤニヤせずにはいられなかった。
あの大舞台はすごくしんどくてきつかったけど、すごく楽しかったのに違いない。それは想像に難くなかった。
岩崎優という人は、言葉で多くを語らずともピッチングで己を示すことができる。
「いつも通りマウンドに上がりました。」
これができるから、強い。
