うまいことはいえないが。

書きたいように書いていたい。自分を救いたい。誰かになにかを伝えたい。

温泉が呼んでいたから!

梅雨をすっとばして夏みたいな日だった。
決行日はいい天気。
どうしようもなく、とにかく毎日つづく日常から抜け出したくて、土曜日の昼休みに宿を予約した。
だいぶ前から次の旅の候補地に入れていたその場所は、山の中の温泉。
宇陀榛原(はいばら)の美榛(みはる)温泉。はじめて聞く場所。某予約アプリで奈良の温泉地を調べていたらヒットしたのだった。
奈良は好きだ。大阪から近くて、ほかの近畿圏よりも混んでいなくて、いつも心なしかゆるやかな空気が流れている。
もう行くしかない、奈良へ。
今しかなかった。
梅雨入りしたら出かけるのが億劫になるし、月末からツール・ド・フランスがはじまるから毎晩観たいし、生理は…… まだギリギリきてない!
今しかない!
宿をとって、仕事に戻ってからは上機嫌だった。
何か難しいことがあっても、
「まっ、わたしは明日には温泉へと旅立つ女ですから無敵ですけど???」
って感じで、おおらかな気持ちになれるからすごい。

 

道の向こうに山だ。

かくして大阪メトロと近鉄電車に揺られて一時間と少し、駅から送迎バスでちょっと山を登ったら到着。

翌日に撮ったから曇ってる。晴れてる時に撮っとけばよかった。

 

県の保養センターだという今回の宿は周りに店の類いが全くなく、文字どおり山の中にたたずんでいて「何もしない」をしにくるにはうってつけ。
だって温泉があるんだもの。他には何もいらないのだ。
いつものように素泊まりプランにして食糧を持ち込んだ。
晩ごはんはおむすびとからあげとみそ汁、おやつに成城石井のチーズケーキアソート、朝ごはんはドンクのクイニーアマンとミニドーナツ。みんな上本町のデパ地下で調達した。
同伴者がいたらぜったいに持ち込みパーティーはできない。
「せっかくやから、ちょっと奮発してええもん食べに行こかあ」ってなるもん。
だからこういうのが楽しいんだ、ひとり旅っていうのは。

 

窓の外が緑一色。


温泉には、いつもどおり五回入った。
入った瞬間ぬるぬるとして、ローションに浸かっているみたいなアルカリ性のいいお湯だった。
バルコニーに出られるようになっていて、サウナ小屋と水シャワーがあって、山と緑のにおいを吸い込みながら外気浴ができて最高だった。
アイスとヤクルトの無料サービスがあったのもよかった。心づくしのおもてなし。

好きなものを食べて、サウナと温泉をたっぷり楽しんで、ひとりの時間と空間を満喫して、あっというまに旅が終わってしまった。
また電車に揺られて帰路に着く。復路はいつも名残惜しい。もう一泊したい、といつも思う。だけど帰ったら帰ったでホッとするのだ。
大阪駅で寄り道をして、これから家で食べていく食材と調味料をルクアのカルディで買い込んでゆっくり帰宅した。塩だれといぶりがっこのタルタルソースは欠かせない。
旅のお土産は宿の売店で売っていた「だしぽんず」にした。
我が家の人たちはわたしも含めてポン酢が大好きなので、どこか旅に出たら地元産のポン酢を買うようにしている。
ポン酢、個性がありながらだいたい何でもおいしいからよい。

温泉に呼ばれたなあ。
呼ばれてだいじょうぶなタイミングだったし、ほんとは呼ばれるのをずっと待っていたともいえる。
このごろは前みたいに遠くへ出かける気力がわかなくて、あれこれと出かけられない理由をつけては家から自転車で行ける範囲内で引きこもっていたのだった。
旅は、心のつまりをほどいて新しい風をとおしてくれる。
ほんの時々でいいから、知らない場所で、ひとりで。どこかに呼ばれていそいそと出かけよう。
山は堪能したから、次は海がいいなあ。