うまいこといえない。

うまいこといえない人がつたないなりに誰かになにかを伝えるための場所。

「このチームがほんとうに好きだわ。」

志半ばに、しかし戦い抜いてこの世を去った横田慎太郎さんのユニフォームが宙に舞うのを見て、心からそう思っていた。
生前の彼の登場曲「栄光の架け橋」とともに、仲間とともに想いを背負った岩崎優選手が胴上げ投手となった。
こんなに嬉しいことはない。ちょっと泣いた。じんわりと泣いた。
V逸した年はほんとうに悔しかったと思うんですよね。
「あのゲームで自分が押さえられていたら」ってずっと思ってたんじゃないかな。
あんまりこういうことをわかったように言いたくないんだけど、でもそういう想いはただ見てただけのわたしでさえも、さぞ悔しかったであろうなあとずっと痛みのように感じていた。
もちろんいいこともいっぱいあったけれど。
東京五輪で金メダルを持ち帰ってきたときはめちゃくちゃ嬉しかったなあ。
でも、でも、きょうはそれ以上。
野球を好きになって、きょうがいちばん嬉しい日。

野球ファンって、いや、なんでもファンというものはそもそもめんどくさい。
勝手に期待して、勝手に喜んで、勝手にがっかりして、勝手に怒って、勝手に落ち込んで、勝手に語って。
勝手だなあという自覚があるから、せめてわかったふうに言いたくなくって、わかってるファンみたいにふるまいたくなくって、だから野球のことも阪神のこともあんまり外では話してこなかった。めったに書かなかった。
わたしは競馬で「そういう感じ」になってしまっていた過去があるので、ちょっと慎んでいたのだ。
他人の情熱に触れることは好きだけど、いまの自分がそれをやるのはなんとなく怖さとか照れみたいなのがある。
それに阪神が勝てば相手は負けている。
あたりまえのことなんだけどフォロワーさんには他球団ファンの人が多い。
いい大人が勝った負けたでべつに揉めたり妬んだりはしないだろうけど、逆の立場ならよかったね〜と祝福できるのに、こっちのこととなるとなんとなく「とらほー」とはいいづらいのだ。
「やった〜」「勝った〜」くらいは言うときもあるけど。
そういう難しさを、野球ではより感じる。
だからきょういきなり「アレ」を喜びだして「なんの話やねん!?」と感じてる人もいるかもしれない。
いやいや、実はいきなりじゃないんですよ。ただ言わなかったし書かなかっただけで。

和田豊監督の途中らへんからプロ野球を観はじめて、そこから十年くらいは経つのかな。
いったいなんの縁があったものか、子どもの頃から嫌いだった、ルールもぜんぜん知らなかった野球に興味がわいて、知らなかったことを知っていって、年間を通してゲームを楽しめるようになって、もはや暮らしの一部としてタイガースを応援するようになっていた。
だからリーグ優勝は夢だった。
夢叶う。叶ってしまった。ついに。
自分自身はぜんぜんがんばってないのに人のための夢ばっかり叶っていくなあと、応援というものをしているといつも感じる。
だから喜びながら「うぬぼれたらあかんで〜」と自分に言い聞かせたりする。
勝手に好きで見てたら、めちゃくちゃがんばったすごい人たちが自力で夢を叶えた。自分はその一部始終を見てただけ。
応援ってそれくらいのスタンスでええんとちゃうかな、というのが近年のわたしのスタイル。
あんまり気負ってやってると、あかんなってるときに「してやってるのに」とか「わたしのせいで」みたいに思ってしまいそうで、そうはなりたくない。
ただ見て想う応援でもいいじゃない、なにを好きでなにを望んでるかは自分の心が知っているのだから。
でもときどきはこういうふうに想い感じたことを記しておきたい。
好きを語りたい。ちゃんと書いておきたい。
わたしの好きなチームは最高なんだから。
というわけで阪神タイガース、「アレ」あらため優勝おめでとう!
わたしはあなたたちが大好きだ!!