うまいこといえない。

うまいこといえない人がつたないなりに誰かになにかを伝えるための場所。

「喪服のサイズが変わる前に」を読んで

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親友のことを思い出した。
昔一緒にプリクラを撮った親友から、わたしは自分から離れた。
かおりと同じで、男が理由だった。
わたしに男ができたんじゃない。その逆。
結婚をした親友の話を訊くのがみじめでたまらなかった。
いくら話を訊いても、うまく共感も助言もできない自分が嫌でしかたがなかった。
わたしには何もないんだと思い知らされるようだった。
だから、逃げるようにフェードアウトした。
十年以上経ったいまも連絡はとっていない。
わたしは卑怯者だと思う。親友はなぜわたしが逃げたのかをたぶんわかっているだろう。
わかっているから放っておいてくれたんだろう。
確かめるすべはないし、確かめるのも怖いから、たぶん一生確かめはできないけれど。
わたしは歳をとって太った。服のサイズが変わった。親友もたぶん同じ感じだろう。
いつかまた会うことはあるだろうか、話すことはあるだろうかと思いながら結局叶わずどちらかが喪服を着ることになるのかもしれない。着ることすらないのかもしれない。
人と人って簡単に離れてしまうものだし、離れてしまえばそう簡単には会えないものだ。
人は気持ちをなんとなくうやむやにしてしまうから。
忙しさやわずらわしさや気まずさを、気遣いだったり優しさのようなものにすりかえて、自らに言い訳をして逃げ道をつくる。
あのときの気持ちをうやむやにして離れてしまったわたしは、ときどきこうして親友のことを思い出す。
もう会えない。それは会う気がないということだろう。
自分から逃げてしまったあのときの罪の意識はやっぱり消えない。