うまいことはいえないが。

書きたいように書いていたい。自分を救いたい。誰かになにかを伝えたい。

「行きつけの店の馴染み」に、なってみる

仕事帰りに、いつもの美容院で前髪カットをしてもらってきた。
この日で通うのを最後にするつもりだった。
お出かけもおしゃれもしない、なんにもなくなってしまったいまのわたしにここのカット代(プチプラでない)を払うだけの価値があるのかどうか迷っていた。
これからは安い店でそこそこに毛刈りしてもらえばいいや、とさえ思っていた。
けれども、やっぱり居心地がいいのだ。気分がいいのだ。前髪をそろえてもらった、たったそれだけのことで。

いつもの美容院はマンツーマンで丁寧にカウンセリングと施術をしてくれる。髪質をよく見てくれている、と感じる。
美容師さんとの波長が合う。ありがちな尋問めいた質問責めも、沈黙を埋めるためだけのトークもしない。会話は髪を通じて自然に生まれてくる。
前髪カットも丁寧にして、長くもたせてくれる。
おかげで全体のカットは三ヶ月に一度、あいだに前髪をそろえてひと月。それくらいのペースで通えばヘアスタイルを維持できる。
月々で換算したら決して惜しくない出費。自分が気分良く暮らしていくための必要経費だ、これは。
だから、やっぱりもうしばらく通おう。

「行きつけの店の馴染み」になりたくないと、ずっと思っていた。
客として行っているはずなのに、そこでの関係性を保つために気を遣ったり、いい客であろう、いい人であろうと気を張るのがしんどくなってくるから。
そこがいい店で、相手がいい人で、信頼できる人であればあるほどプレッシャーが強くなってしまう。
好きな場所を失いたくない、失敗したくない、ださい垢抜けないケチで変な客でありたくない。そんなことを思いながら常に緊張してしまう。
この怖さと恐れを抱きつづけるくらいなら、どこの店でもずっと一見さんのままでいい…
そんなの考えすぎだって言う人もいるだろうけど、わたしは「考えちゃう人」なのだ。今まではそうだった。

でも、なってみようかな。「行きつけの店の馴染み」というものに。
そろそろだいじょうぶだと思う。顔と名前を覚えられてぼちぼち長いから。
うわあ〜顔と名前覚えられちゃったよ、なんてはじめのうちは恐縮していたけれど、近ごろは出迎えられるとホッとする自分がいる。
それって、そういうことでしょう、もう。
次にカットしてもらうときは、ちょっとしたイメチェンの相談をするつもり。新しい自分で、どこか知らないところへ出かけたい。