うまいこといえない。

うまいこといえない人がつたないなりに誰かになにかを伝えるための場所。

まだ、はつ恋の沼にハマっておりまして

ツルゲーネフのはつ恋があったので、Kindleで読んだ本。

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はつ恋のページはほんちょっとだけなんだけど、これもコミカライズといえばコミカライズ。
夜な夜な小説を読む一般男性が妄想で劇中の女たちと戯れるという、あたらしい切り口のプレゼン漫画。
うん、文学ってえろいよね。
はつ恋はぜんぜんえろくないんだけど。そこがいいんだけど。
これもぜんぶウラジーミルが純粋だったおかげ。16にもなって何てウブなんだ、ウラジーミル。

ジナイーダは高飛車な最凶お姉さまとして描かれてて、キレイだけどキツイ。キツイけどキレイ。
男たちを花束でシバきまわしてるカットよりも、涙をにじませた憂いの表情がいい。ぐっときた。
主人公とともにプラトークにくるまれてるときのドレス姿も美しいのだ。
腕や手のラインがしなやかで、作者さんは女性を描くのが好きなんだろうなぁとわかる。(ほかの話はかなり性に直結した描写が多い)(男性の欲や本音が生々しくって、まあ漫画だからなんとか許せるけど苦手なところもあった)
この調子でもうちょっと長く読みたかったなぁ。オムニバスとはいえあまりに短くって。
というわけでどなたか全編コミカライズしませんか…
エロや萌えや属性づけなしで、淡々としたタッチで、はつ恋を漫画で読みたい。
絵本もよかったけど、絵本って抽象的で。それがいいんだけど。
はつ恋を要約するのは、はっきりいって無理だ。
事実だけを書き起こしたら数行で終わって味気ない。
ウラジーミルが心の中で悶々としてるところが本体だから、そこをはしょったらどうしようもなくなるのだ。
その点、本書はあくまで読んだ人の感想と妄想でオチがつく。うまい。

ツルゲーネフのはつ恋は沼。
はじめて読んで以来ずっとこの話の奥深さにハマっている。
主人公目線でしか書かれてないから想像の余地がありすぎる。
最近考えてたことといえば、ドクター・ルーシンがジナイーダに幻滅したのは彼女が不倫の恋で女になったからってだけでなく、自らも一度どこかで彼女と関係を持ったからっていうのもありうるなぁとか。
ウラジーミルの父ピョートルとの道ならぬ恋があまりにつらいジナイーダ、相手はべつに誰でもよかったのだと思おうとして取り巻きのひとりのお医者さんを誘った。
ピンで手を刺したお詫びをしてさしあげてよ、とか言って。
けど誰でもよくなかったことがわかってしまった。
お医者さん、女のそういうのめちゃくちゃ嫌いそうだ、なんとなく。未遂だとしてももうあかんってなりそう。

ウラジーミルの父ピョートルが死の間際にジナイーダからの手紙を読んで号泣したのって結婚報告を受けたからなのでは、とか。
自分が捨てたのに自分が捨てられたことにショックを受けるピョートル。
女々しくて女々しくて女々しくてつらいよ。
なるほどあれはショック死だったのか。女の毒を恐れよ…
ジナイーダが妊娠、堕胎してたって説よりしっくりくる。つじつまは合う。前に挙げといてなんだけど。
女の恋愛は上書き保存だからな。鞭の傷とともに癒えたんだ。
じゃあピョートルの死後、妻が送ったまとまったお金なんやねんってなるけど。手切れ金兼祝い金か。

あとザセーキナ公爵夫人ことジナイーダの母のこと。
がさつなおばさんとして書かれてたけど、娘のジナイーダのことは公爵令嬢として大事に育ててた。
ちゃんとフランス語を話せるように教育を受けさせて、綺麗なドレスも着せて。
夫亡き後も娘の養育に人生を捧げてきた。自分のことは二の次。金に汚かったのはすべてそのため。
だから最期はああいう書きかたになった。
あれ、注意深く読んでなきゃジナイーダの母ってわからないぞ。
大事に育てた娘が隣家の妻子ある男にもてあそばれて捨てられて、そのせいで結婚に苦労して、やっと結婚して子どもを授かったと思ったら、お産がもとであっけなく先立ってしまった。
そりゃあ衰弱もするし神にも祈る。
ウラジーミルが看取ってくれてよかった。
わたしも彼女のためにあらためて祈りたくなったのだった。

はぁ、はつ恋おもしろい。
ジナイーダ、おもしれー女…。
いいかげんほかのツルゲーネフも読みなさい自分。
父と子は読まねばと思ってるのだけど。
ツルゲーネフ以外では、プーシキンの大尉の娘が気になっている。そのうち読む。

 

 

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